ホワイトカラーエグゼンプションと現行制度と経営側へのインセンティブ

　ホワイトカラーエグゼンプションの議論のほとんどがそれと裁量労働制および成果主義を混同している。

　職種は限られるが裁量労働制も成果主義もどちらも既に現実に導入されている制度である。
　その制度とホワイトカラーエグゼンプションの差分を語る議論を目にすることがほとんどない。探してもいないので後で探してみないといけないが。そういえば前に日経新聞になにか表が載ってた気がする。

　特に成果主義との混同が酷く、成果に応じて所得を得るのは当たり前だという人間がいるが、なぜ彼らは現行の成果主義とその改善について語らないのだろうか。

　自由な勤務形態も、現行の裁量労働制の枠内で成果主義と組み合わせることにより、十分実現可能なものである。

　今労働者の自由度をてこにホワイトカラーエグゼンプションを求める経営者。一方でフレックスタイムを廃止したり事実上無効化したりする。その本音はどこにあるのか。個々人の生活に応じた自由な勤務形態、なんてところに目的がないのは明らかだ。
　そもそもホワイトカラーエグゼンプションのメリットとして語られる内容に、導入を求める経営者を利する現実感あるインセンティブがまるで感じられない。それが最大に胡散臭いのだ。

　経営側にとってのインセンティブはどこにあるのか。


　以下はいささか邪推的だが、このくらい警戒してしかるべきだ。そのくらい、ホワイトカラーエグゼンプション導入を目指す本当の目的が見えず胡散臭い。

　１、”自由な勤務形態”によって、２４時間縛ることができるかもしれない。
　　仕事時間と拘束時間は異なる。通勤時間が明らかに勤務に伴う拘束時間であるように、拘束時間＝
勤務時間　ではない。夜討ち朝駆けで仕事をさせることが可能になるかもしれない。休日にいきなり仕事を振ることができるかもしれない。実際中小にはそういう会社もあると思うが。というか職場のネット化により、実際それに類する流れは存在する。

　２．会社として時間を管理しないことができるかもしれない（過労死ライン、のような証拠がなくなる）
　時間管理は自己申告、自己責任（会社として管理しようのない体形になることを理由として）になるかもしれない。自己申告のガイドラインは作るに違いない。一方時間と関係しない働き方なのだから会社としてそれの管理責任がなく、自己申告がガイドラインを意識した嘘でもそれこそ自己責任、ということになるだろう。

　３．手当の支払いが必要ない。
　　裁量労働では残業代は出ないが、ホワイトカラーエグゼンプションになると深夜手当、残業手当、といった手当が必要なくなる。深夜働かせるのが簡単になる。今健康がどうとかいっている会社が、手当がなくなったらどんな不規則な勤務を気にしなくなるか、ある種楽しみである。いや、うちの職場に管理職でもないのに収入ラインを超える高給取りがそれほどいるとも思えないので、収入ラインの水準が下がるまでは見ることはかなわないか。

　４．給料を減らせるかもしれない
　　どうやって減らすのか。完全成果主義にすれば、成果の少ない社員の給料を大きく減らすことができるだろう。これは仕方がない、とは言えるが、ホワイトカラーエグゼンプションでは時間の概念をなくしてしまうことにある。時間の概念がなければ、それに制約されざるを得ない業務目標のベースが変わってくる可能性がある。成果は相対的なものであり、相対的に成果が少ないものがいくら頑張っても意味がない。でも頑張らないともっと減らされるから、普通に頑張ってできる人が残業１００Hなら、そうでない人の残業が月２００H超の状態になってもおかしくない。それで給料を減らせる。
　あまり論理的にならなかったが、とにかく普通の経営者は社員をぎりぎりまで働かせて（生かして、ともいう。それによって業績を伸ばして）、かつ全体的に給料総額は減らしたい、のは間違いない。

　今のホワイトカラーエグゼンプションはかなり限定された範囲になっているが、この範囲で固定されることは１００％ない。必ず拡大していく。まずは一つ導入してしまうことなのだ。それさえできれば、それをてこにここは導入されてるのにこっちはなんでされない、と、今度は相対論と公平性で拡げていくことは導入するのに比べて難しくない。

　人は１日２４時間以上生きられない。一生を考えたとき、時間というファクターを切り離して考えることは決してできない。ホワイトカラーエグゼンプションが、会社がその時間を際限なく（といってもやはり２４時間以上にはならないが）食い尽くそうという制度でないと、なぜ言えるのだろう。

タグ：成果主義 裁量労働 ホワイトカラーエグゼンプション